日本酒初心者奮闘記01「甘口」の日本酒ってどんなもの?


日本酒初心者奮闘記01「甘口」の日本酒ってどんなもの?

更新日:2023/06/18


日本酒に興味があるけれど、知らない用語や表現が多くてとっつきにくい……。そんな悩みを持っている方は意外と多いはず。美味しく飲めれば楽しみ方としてはバッチリですが、せっかくならいろいろ知って世界を広げたい! という気持ちもありますよね。


このシリーズでは、日本酒ビギナーのライター・松下が、日本酒セレクトショップ吟天の社長に学びながら、少しずつ勉強していく様子をお伝えします。松下と一緒に、日本酒の世界を広げましょう!


初回のテーマは、飲みやすい日本酒の代名詞とされる「甘口」について。甘口のお酒を知る目安、おすすめの甘口日本酒、そして新しいスタイルの甘口のお酒などなどをお聞きしました。


*一部画像をクリックすると、ペアリングレシピがご覧になれます。ぜひお試しください。

「甘口」のお酒は飲みやすい?

日本酒初心者ですと言うと、詳しい方が「このお酒が飲みやすいよ!」とおすすめしてくれることがありますよね。そこによくよく添えられているひとことが「甘口で飲みやすい」「甘くてフルーティ」という言葉です。
 たしかに勧めてもらったお酒を飲むと飲みやすくておいしいのですが、そのお酒のどういう味わいが「甘口」に当たるのかがわからない……
 そこで、まず「甘口」とはどんなお酒を指していうのかを調べてみました。

日本酒度=日本酒の比重は糖の含有量の目安になる

日本酒の甘さ・辛さを知るための目安としてよく用いられるのが「日本酒度」という数値です。
 日本酒度とは、日本酒の比重(=水など基準となる物質との密度の比)を表す数値。アルコール度数15度の清酒と水の密度の比率を基準に、それよりも比重が大きい(重い)場合は日本酒度マイナス、小さい(軽い)場合は日本酒度がプラスになります。


なぜこの比重が味わいの目安なのかというと、日本酒の比重が変わる要因の一つが、含まれる糖の量だからです。
 糖は水よりも比重が大きく、アルコールは比重が小さいため、糖の多いお酒ほど比重が大きい=日本酒度がマイナスということになります。糖はもちろん甘いんので、一般的に日本酒度がマイナスであるほど甘いお酒とされるのです。


松下:なるほど、じゃあ日本酒度の低いものを選べば、甘口が飲めるということですね!


社長:実は、そうとも限りません。日本酒の味を決める要素はたくさんあるからです。『甘口』『辛口』という言葉にも、明確な数値の決まりはありません。


松下:そうなんですか!?

日本酒の味を決める要素はたくさんある

砂糖をたっぷり入れた紅茶が甘いように、糖が多ければ多いほど甘口、という解釈で合っているようにも思えますが、なにが違うのでしょうか?
 その秘密は、日本酒の味を決める複雑な要素にあるようです。



社長:お米にはタンパク質も含まれるため、発酵させるとアミノ酸が発生し、アミノ酸由来の旨味や甘味、苦味を感じることがあるんです。また、使う菌や発酵具合によっては酸味を生じる有機酸が発生します。そういった他の味との組み合わせでも、味わいは変わってきます。


松下:なるほど、単に糖の量だけで決まるわけではないんですね。


社長:そうなんです。最近は、甘さと酸味がどちらも感じられる「甘酸」、甘さと旨味の「甘旨」など、奥行きのある味の日本酒が人気なんですよ。


松下:奥行きのある味ですか、なんだか難しいですね……


社長:難しく考えすぎる必要はありませんよ。実際にいくつか、特徴的な甘口のお酒を飲んでみましょう。

代表的な甘口の日本酒

社長:では最初に、一般的な日本酒のなかで、甘口の味わいを持つお酒をご紹介します。お米の甘さをどんなふうに引き出しているか感じてみてください。


松下:はい、よろしくお願いします!

森のくまさん おりがらみ妙延(栄光冨士)

ラベルの熊がとってもキュートなこちらは、熊本県産のお米「森のくまさん」を使ったお酒です。


グラスに注ぐと、さっきのお酒と違ってやわらかい乳白色。実はこちら、「おりがらみ」といって、お米や酵母の細かいかけらが残ったタイプのお酒なのです。
口に含むと、ほのかにシュワッとした発泡感と、お米自体をよく噛んだときのようなミルキーな風味が広がります。なるほど、これはよりダイレクトにお米の甘さを感じる1杯です!
飲み込むとちょっぴり酸味もあり、後味は意外とさっぱり。酸味とお米の味が相まってお寿司のイメージになるのか、魚介と合わせたくなる味でした。


栄光冨士はこちら

純米吟醸(醸す森)

口に近づけてびっくり。お酒くささを感じません! 代わりに、洋梨のようなオシャレフルーティな香りが広がります。
口当たりは酸味があって爽やか。お米っぽい甘さとフレッシュなすっぱさ、そして香りが組み合わさって、「お米の果汁」とでも言いたい感覚です。
『醸す森』は、新潟県の老舗酒造が、「若い人にも日本酒に親しんでほしい」という思いで立ち上げたブランドとのこと。日本酒の印象がいい意味で変わる、フレッシュな味わいでした!


醸す森はこちら

お酒で仕込んだお酒「貴醸酒」

松下:甘酸っぱかったり、ミルキーだったり、お米だけでこんなにいろいろな甘さを引き出せるとは驚きでした……


社長:そうですよね。風味の違う甘口のお酒はまだまだありますよ!
次に、さらに甘みのある味わいが特徴の「貴醸酒」という種類のお酒をご紹介します。このお酒は、仕込みのとき水の代わりにお酒を使うんです。


松下:仕込みにお酒を使うなんて贅沢! でも、どうしてそれで甘いお酒ができるんですか?


社長:通常の日本酒は、麹ベースの液体「酒母」に米と水を少しずつ加えることで、酵母菌がお米をでんぷん→糖→アルコールと分解して発酵が進みます。そして一定以上のアルコール濃度になると、酵母菌自体が環境に耐えられなくなり、発酵がストップします。
貴醸酒では、仕込み時に加える水の一部を日本酒に置き換えることで、糖が残ったままアルコール濃度が上がって発酵がストップするため、甘みのある仕上がりになるんです。


松下:造り方で変わってくることもあるんですね、どんな味なのか楽しみです!

貴醸酒 生酒(満寿泉)

さっそくはじめの1杯。
普通の日本酒と比べて、少しとろみがあります。口当たりはスイート! 砂糖のようなツンとした甘さではなく、はちみつのようなもう少し柔らかいイメージです。なるほど、これは糖が残っているというのも納得の仕上がり。
 でも、不思議と後味はベタベタせずすっきりしています。バニラアイスにかけるのもおすすめだとか。試してみたい!


満寿泉はこちら

DESSERT SAKE(水芭蕉)

細身のボトルがお洒落な貴醸酒です。その名も「DESSERT SAKE」と、いかにもスイートそう。
グラスに顔を近づけると、まったりとした甘い香りが漂います。まるで高級なお花屋さんに入ったときのようなイメージです!
一口飲むと、高級感のあるしっとりした甘みで、うしろにお米らしい穀物のミルキーさを感じます。飴をゆっくりと舐めるように、香りと甘みを味わいながら、少しずついただきたい味わいでした。


水芭蕉はこちら

ORBIA LUNA(WAKAZE)

こちらは、なんと貴醸酒を白ワインの樽に入れて熟成させたという1本。たしかに、お米だけとは違う、バニラのような不思議な甘さが香ります。
 香りから想像するような濃厚な甘さがありますが、同時にキュッとした酸味もあるので爽やか。心なしか、フルーティな白ワインのような風味も感じます。和風にも洋風にも感じられる、不思議な味わいです。


WAKAZEはこちら

低アルコールで甘口のお酒

社長:次に紹介するのは、アルコール度数を抑えて甘口に造ったお酒です。


松下:アルコール度数を変えると味が変わるんですか?


社長:そういうこともあるんです。
先程お話ししたように、日本酒は発酵が進むと糖が減り、アルコールが増えます。そのため、途中であえて発酵を止めて低アルコールに仕上げると、その分糖をしっかり残せるのです。
一般的な日本酒のアルコール度数は15度前後と、飲み慣れない人には少し高めですよね。その点、低アルコールのお酒は軽い飲み心地で、初心者の方にも楽しみやすくなっています。


松下:美味しいお酒はつい飲みすぎてしまうので、低アルコールだと安心です。さっそく飲んでみます!

SHICHIJI/REIJI(HINEMOS)

お洒落で飲みやすい日本酒ブランドとして人気のHINEMOS。飲む時間に合わせてプロデュースされたお酒が特徴です。


SHICHIJIは、アルコール度数5度のスパークリング日本酒。グラスに注ぐと、お米の粒や酵母で、全体がやわらかい白色をしています。
 飲んでみると、お米をよく噛んだときのようなふんわりした甘さと、爽やかな香りが、泡にのって広がり華やか。後味はすっきりで、こういうタイプの甘さならどんな食べものにも合わせやすそうだと感じました。ディナーのはじめに乾杯したいお酒です。

REIJIは、まるでロゼワインのようなピンク色がとってもキュート。こちらもアルコール度数は5度と、飲みやすい低アルコール日本酒です。
 香りはいちごのようなみずみずしさ。飲んでみると、甘酸っぱくてカクテルのような感覚に驚きます! 同じ甘さの強いお酒でも、貴醸酒よりもさらりとしてライトな飲みくちでした。冷やしておくとどんどん飲めそうです(結局飲み過ぎてしまうかも……)。


HINEMOSはこちら


果物を使ったお酒

社長:最後に、変わったところとして果物を使ったお酒もご紹介しましょう。


松下:え、日本酒なのに果物を使うんですか?


社長:最近は、副材料として果物などを入れた、新しいタイプのお酒が増えてきているんです。お米だけのお酒とも、リカ―を使った果実酒とも違った、独特の甘さが楽しめますよ。

梅酒 日本酒仕込み(土田酒造)

果実酒の定番、梅。飲みやすく男女問わず好きな方が多い梅酒を、日本酒で漬け込んだお酒がこちらです。
>  リカ―で漬けた一般的な梅酒に比べて、カドのないまろやかな飲みくち。お酒臭さも少なく、代わりに梅の香りが際立ちます。ベタッとした甘さはむしろ少ないですが、果実感と穏やかな旨味が楽しめました! 梅酒好きにはぜひ味わっていただきたい1本です。


土田酒造はこちら

とろけるやまがたシリーズ(出羽桜)

果物の、果汁だけなくピューレも加えた贅沢な日本酒リキュールシリーズです。桃、ぶどう、洋なし、りんごなどなど、山形県自慢の果物が、それぞれ果汁90%超とたっぷり使われています。
口当たりはまさに「大人のネクター」! とろりと甘く、超濃厚です。果物のフレッシュさが、日本酒の旨味と風味でぐっと分厚くなり、なるほどこれはたしかにお酒。「ジュースでいいじゃん」とは言わせない、華やかな存在感があります。
ロックで飲んだり、炭酸やミルク(!?)で割るのもおすすめとのことです。季節ごとに好みの果物を試したくなりました!


出羽桜はこちら

Nature B 自然米&あまおう(吟天×LIBROM) Grape(LIBROM)

こちらは、日本酒に副材料として果実や果汁を加えた「クラフト日本酒」です。


「自然米&あまおう」は、無農薬で育てた自然米の玄米と、いちごの王様あまおうで造ったお酒。香りはまさに、フレッシュでフルーティなあまおう全開です! 口に入れると、トロピカルで華やかな甘さを感じます。なんとこれは、果実ではなくお米から引き出した味わいだそう。カラフルなラベルのイメージにぴったりの、ポップな甘さでした。


 一方Grapeは、巨峰を副材料に加えたお酒。口に入れた瞬間にじゅわーっと甘みと香りが弾ける口当たり、ぶどうを噛んだときそのもののようです! インパクト大!
ほのかに皮の渋みも感じて、日本酒と果実酒とワインのいいところだけを集めたような、新感覚のお酒でした。


GINTEN NatureBはこちら


LIBROMはこちら

甘口の日本酒は入り口を広げてくれる存在!

松下:「甘口」とひとくちに言っても、いろいろな味わいがあるんだとわかりました。お米の味を感じるものから、カクテルのようなタイプまで幅広くて、とても楽しいです。


社長:甘口のお酒は、アルコールのキツさを感じさせないものも多く、日本酒を飲み慣れない人の入り口としておすすめです。いつも飲んでいる果実酒やカクテルと同じような感覚で、まずはぜひトライしてみてください。



ここで紹介したもの以外にも、甘口の日本酒にはいろいろなラインナップがあります。気に入ったお酒があったら、同じジャンルや、同じブランドのお酒を試してみると、楽しみが広がりそうです。
 みなさんも、気になるお酒があればぜひ試してみてください。

ライター紹介

松下 梨花子 (まつした りかこ)


管理栄養士・ライター
東京農業大学にて栄養学を学び、給食会社に管理栄養士として就職。その後、食と健康についての情報を伝える仕事をしたいと、ライターに転身。書籍や雑誌、webなどで取材・執筆活動を行う。
趣味は、食べること、飲むこと、踊ること。

スパークリング日本酒・awa酒、厳選地酒の通販は吟天へ

豊富なスパークリング日本酒・awa酒、厳選した地酒の日本酒オンラインショップ、吟天。
近年、女性人気も高まっている日本酒のご購入には吟天をご利用ください。
通販での販売に加え、日本酒ペアリング食事会(毎月第二火曜)を主催。
随時開催のフレンチ・イタリアンのペアリング会もございます。
吟天シェフ酒サイトでは、日本酒とさまざまなお料理とのペアリングをご紹介し、
さらに美味しく、楽しい日本酒の世界へご案内いたします。

ページトップへ