【GINTEN NatureB】ぷくぷく醸造 世界初の玄米ホップクラフトサケへの挑戦 in 浅草 木花之醸造所 酒造り編!


【GINTEN NatureB】ぷくぷく醸造 世界初の玄米ホップクラフトサケへの挑戦 in 浅草 木花之醸造所 酒造り編!

更新日:2023/04/11


吟天はサケノアルケミスト※と共同で米作りを始めました!
しかも、取り組むのはプロの農家さんでも難しいと言われる自然栽培米です。
そして、いよいよ季節は冬。昨年、収穫したお米を使用していただいたお酒造りへの挑戦です!


今回は2023年2月に行われた、ぷくぷく醸造 立川哲之さん(製造場所は浅草 木花之醸造所)のお酒造りの模様をお届けします。


※日本酒有資格者4名による日本酒プロモーションチーム
https://www.instagram.com/sakenoalchemist/?hl=ja

玄米を使ったクラフトサケへの挑戦!

▲通常の麹と異なり茶色い玄米麴


今回の立川さんのお酒造りでは、自然栽培、無農薬で育ったお米のポテンシャルを最大限に生かすため、なんと玄米で行うことになりました。稲藁もしめ縄にするなど、原料を余すことなく使用しサステナブルな取り組みにこだわってきたこのプロジェクトの精神を最後まで貫きます!


しかし、一般的にお酒造りにおいては精米したお米を使用します。
それは、米の外側にはタンパク質、脂質、ビタミンなど雑味につながる成分が多く含まれているため、外側の残っている部分が多いほど、美味しいお酒造りをするには技術が必要だからです。


ましてや玄米となればなおさら。精米技術が確立されてからは、玄米を使用するお酒造り自体ほとんどされることがありません。大変困難な挑戦と言えるのです。立川さんも玄米のお酒造りは初めて!


どう設計するかを検討の結果、今回は白麹、ビール酵母、そして立川さんが得意とするホップを副原料に用いた世界初のスペックのクラフトサケ造りに取り組むことになりました。


スペックだけではどのようなお酒になるのかは全く想像がつきません!

玄米の原料処理と仕込み

▲お湯を使用した洗米作業


精米した原料を使う日本酒造りにおいては、汲水時間(米に水を吸わせる時間)を秒単位で計り水分量をコントロールしていきますが、玄米では前日から 水に漬け完全汲水させます。


また、通常使用する精米後のお米では、米の表面に多く含まれるたんぱく質・脂質・ビタミンなど、のちに雑味になる成分の多くが除かれますが玄米は当然そのまま。


そのため、冷水を使用する洗米作業も50~60℃程度のお湯で行い、油分など不要な成分をなるべく取り除いていきます。


そして、仕込みにおいても、セオリー通りに低温で仕込んでも米が溶けないことが予想されるため、高温糖化(55℃程度のお湯を用いて仕込む手法)で仕込んでいきます。


原料処理の段階ですでに異例尽くしの酒造り!常識が全くあてはまりません。 このあとは一体どうなるのでしょうか??

「できてしまった」だけのお酒を出したくない!

2月18日(土) この日はこれまで田んぼでの除草作業や稲刈り、収穫した藁を使用したしめ縄飾りワークショップに参加していただいたメンバーを迎えて、瓶詰作業を行うはずでした。


しかし、製造責任者のぷくぷく醸造 立川さんはどうにも物憂げな表情でタンクの中身を確認しています。


そして、口をついて出た言葉は、

「できてしまっただけのお酒を出したくない。」

という一言でした。


ぷくぷく醸造は、日本酒ファンなら誰もが年1回の発刊を楽しみにしている「danchu日本酒特集 2023年版」でも取り上げられるなど今最注目のファントムブルワリーと知られています。
そのお酒は変化に富み、そしてただただ挑戦的なだけではなく、立川さんの確かな製造技術によって味も素晴らしいため、発売するといずれもすぐに完売してしまう人気の醸造所です。
需給を考えると出来上がったお酒が多少未完成であっても市場に出せば売れてしまう可能性が高いのです。


しかも、クラフトサケという新ジャンルのお酒の特性上、飲み手も味覚のモノサシを持ち合わせておらず、このお酒の味はこのようなものなのかと納得してしまう可能性が高い。
造り手が失敗していると感じていても、新しい取り組みだからと言い訳はいかようにもできてしまうわけです。


しかし、醸造家 立川哲之はその妥協を許しませんでした。
瓶に一度詰めてしまったら後戻りはできない。今よりもっとよくなる保証はないけれども、より美味しくできる可能性があるのであれば、もうひと手間をかけたいと語ります。


作業のために集まったメンバーの朝早起きは完全に無駄になることになりますが、全員そのモノ造りへの精神に共感!納得の上、瓶詰め作業は延期となりました。

急遽実施の「追いホップ」

追いホップ

▲追いホップ投入


クラフトサケの製造では、副原料を瓶詰作業の直前に行うことが多く、今回のお酒造りにおいてもホップを前日に投入していました。


しかし、玄米の原料香に対しホップの爽やかさが足りていない。そう感じた立川さんは、瓶詰作業を延期と決めたその午後、急遽ホップを追加する作業を決断します。


既に投入していた、「ポラリス」と「サザンクロス」(ホップも色々な種類があり、それぞれに特色があります)に加えて、希少で主に限定醸造のビールに使用されることが多い「ネルソンソーヴィン」を3種類目として投入をすることに。


ネルソンソーヴィンは白ワインに使用されるブドウ品種「ソーヴィニヨン・ブラン」に味わいが似ていることから、名付けられたとされています。


軽快かつ華やかで気品のある甘い香りと、清涼感ある苦味が特徴で、クラフトビールでも話題になることが多いホップです。


このホップの追加により、500ℓの醸造タンクに対し高価なホップを前日から投入分と合わせなんと約8㎏も投入!

ホップの投入方法

▲ホップのペレット


立川さん曰く、IPA(ホップを大量に使用してつくられるビール)並みの投入量とのこと。


お酒の売価はこの時点で3000円(税込)と決まっています。そこに原価があがることもいとわない「追いホップ」なわけです!


ホップは、冷凍されたペレット(粉砕され固められたもの)を水またはお湯で戻して使用します。


この作業はホップの香りが揮発しやすいため、密封した容器の中で行うのですが、お湯で戻したホップはタンクに投入できる温度帯に下げるために、容器側面からの熱交換により温度を下げなければなりません。この作業に労力を要しました。


結局タンクに投入できる目安の10℃以下になるまで、約1時間かけて氷水に漬けつつ冷却し、投入が完了したのは午後4時過ぎ。


朝の瓶詰延期の決断から、一日がかりでの方向修正となりました。


さて、その効果はどのようなものでしょうか?あとは、一晩タンク内での変化を待つしかありません。

更なるトラブル!参加者総出の瓶詰作業!!

劇的に改善したお酒

▲びん太の準備をする立川さん


2月19日(日) 追いホップから一夜明け、お酒のバランスは劇的に向上していました!


立川さんの判断も、愁眉を開いて、もちろんGO!!


私たちもタンクの中の香りを嗅がせていただきましたが、玄米の存在感が目立っていた前日までとうってかわり、原料香をホップの爽やかさが包み込み見事に融合しているのを感じました。


このダイナミックな舵取りは通常の日本酒の造りにはない、クラフトサケならではのものではないでしょうか?あらためて、クラフトサケの自由度を感じました。


※なお、クラフトサケについてはクラフトサケ講座・前編後編に加え猩猩宴 in 東京にも詳細がありますのでご覧ください。

瓶詰め作業

さて、この日は本来火入れ作業のために集まったメンバーで、一日遅れの瓶詰作業を実施していきます。


クラフトサケの醸造所では、瓶詰作業をひしゃくで掬って瓶へ手作業で詰めていくところも多いのですが、今回製造設備を使用させていただいている木花之醸造所(醸造委託はぷくぷく醸造、製造場所は木花之醸造)では、2023年1月より三代目醸造長に就任された木村さんからは半自動の瓶詰機「びん太」を使用しています。
因みに、木村さんには今回の造りを多分に手伝っていただいています。


瓶詰機を用いることで、基本的に充填量は一定になり、人は瓶を入れ変えてキャップを締めることが作業になります。タンクから吸い上げたお酒をどんどん詰めていき、総作業時間4時間くらいの想定。


というはずだったのですが!ここでも玄米を使用するクラフトサケ造り初挑戦ゆえの壁に当たることになります。

びん太詰まる!

なんと、玄米入りの醪をタンクからホースで吸い上げようとしたところ、タンク内で玄米のある層と無い層が分かれており、混ざりきらない液体だけを瓶詰してしまいました。


このままでは後に詰めるものと最初のもので大きく濃度が違ってしまいます。製品のばらつきが大きくなってしまわないよう一定にしなければなりません。


課題を解消するために、玄米の粒も吸うように工夫をしたところ、なんと今度はノズルに詰まりが発生!!


まさかの瓶詰機は使用できないことに、、

手詰め作業開始!

▲試行錯誤の瓶詰め作業


2時間かけて1本も瓶詰できないまま、急遽人海戦術での手作業へ移行。


手作業においても、原料の玄米の粒度のためロートも詰まりがち。なかなか充填が進まないため通常の倍以上の時間がかかります。


幸い集まっていた人数が多く、ラインを組み代わる代わる作業することができましたが、それでも終わったのは何と午後7時前!小さな蔵での手作業の大変さを、身をもって参加者は体験することになったのでした。

勝手の違う火入れ作業

予定より遅れていた火入れ作業

▲14本しか入らなかった瓶火入れ


2月21日(月) 予定日から1日遅れての火入れ作業が15時から行われるため私も夜から駆けつけました。本来であれば、日曜日で作業メンバーも確保できていましたが、日程が変更になったため人手のかかる火入れ作業を蔵人メンバーだけで実施しています。
到着したときは想定よりも作業が遅れ、まだ進捗50%程度。


遅れた要因は、木花之醸造所で通常使用している細身の瓶ではなく、太目の瓶を使用していたためでした。

瓶火入れ

▲火入れ作業をする立川さん


今回は瓶燗火入れという、瓶詰された瓶をお燗にするようにお湯で温める手法で行っています。通常の木花之醸造所の瓶であれば20本以上いっぺんに作業ができるところ今回の瓶は太目の瓶のため14本が限界。どうしても、容器のサイズと火入れする窯のサイズで一作業当たりの数量がきまってしまうのです。
また、瓶が太いため中まで火が入りにくく時間も通常よりも要してしまいます。


お手伝いのため私もラインに入りましたが交代することはできても、処理できる本数がきまってしまうため作業スピードを上げることはできません。


ある目的があり選んだこだわりの瓶でしたが大きな誤算。


作業は23時まで続きましたが、それでもなんとか火入れ完了!


いよいよ、次回のラベル貼り編で感動のお酒完成です!

ライター紹介

ワタナベイナリ

千葉県船橋市出身。
SakeDiploma・日本酒学講師・唎酒師・酒匠、全国で約80名のSSI専属テイスターの一人。
講師として活動をする際は、地元千葉の日本酒を用いて講義をすることをモットーとしている。
またオリジナルの「スパイスと日本酒」講座も開催。
本職の広告・プロモーションの知見を活かし日本酒の0→1体験を創出する。

スパークリング日本酒・awa酒、厳選地酒の通販は吟天へ

豊富なスパークリング日本酒・awa酒、厳選した地酒の日本酒オンラインショップ、吟天。
近年、女性人気も高まっている日本酒のご購入には吟天をご利用ください。
通販での販売に加え、日本酒ペアリング食事会(毎月第二火曜)を主催。
随時開催のフレンチ・イタリアンのペアリング会もございます。
吟天シェフ酒サイトでは、日本酒とさまざまなお料理とのペアリングをご紹介し、
さらに美味しく、楽しい日本酒の世界へご案内いたします。

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