福岡の市街地で造るクラフトサケLIBROM〜醸造責任者が描く未来


福岡の市街地で造るクラフトサケLIBROM〜醸造責任者が描く未来

去年、福岡市の街中にオープンしたクラフトサケ醸造所「LIBROM Craft Sake Brewery」(以下LIBROM)。
2022年5月6日で1周年を迎えました。


クラフトサケは、日本酒の原料となる米、米麹、水に加え そこに副原料を入れることで「その他醸造酒」に分類されます。 エディブルフラワー(食用花)や特産のフルーツ、ハーブなどの副原料を使い 福岡の良さを存分に詰め込んだお酒が特徴です。
吟天でも、小田切がその味わいと想いに惚れこみ、2022年3月より取り扱いを開始しました。


今回は、LIBROMの醸造責任者である穴見峻平さんにお話を伺いました。

LIBROMの若き二人

穴見 峻平(あなみ しゅんぺい)さん (写真 右側)

株式会社LIBROM醸造責任者
1992年 福岡県北九州市生まれ。
2013年から約3年半、ドイツへサッカー留学し、アマチュアリーグ計3チームでプレー。
帰国後、2018年秋から阿部酒造(新潟県)で修行。
その後代表・柳生さんとともにLIBROMを立ち上げる。


柳生 光人(やぎゅう みつと)さん (写真 左側)

株式会社LIBROM代表
1992年 福岡県北九州市生まれ。
2011年大学時代から新谷酒造(山口県)にて見習い。
卒業後、新谷酒造(山口県)に就職。さらに農口尚彦研究所(石川県)で修行。
2021年株式会社LIBROMを立ち上げる。

LIBROMとは   福岡で蔵を立ち上げた理由

―――お二人が地元、福岡で蔵を立ち上げた理由を教えてください。


代表の柳生は、実は中学時代の同級生なんです。自分は高校時代、サッカーの強豪校で力を入れていたので、卒業後ドイツに留学していました。
日本に戻ってきたときに、プロを諦めて地元で仕事して生活しようかな、と考えていたんです。でも、なんだか面白くないな。と。
そこで中学時代の同級生の柳生が「イタリアで酒をつくる!」と言っていたのに惹かれました。面白いなぁと。



―――その柳生さんの野心に惹かれたんですね。それぞれの道に進んでからも、関わりはあったのでしょうか?


高校で別の道に進んでからも、ずっと連絡を取り合っていました。中学時代は真剣な話をする間柄でもなかったのですが、大人になって話すと「日本だけで終わらないぞ」という考えがお互いあって。似た考えを持つ柳生についていきたいと思ったんです。
柳生が酒をつくるという計画に「自分もいっしょにやってみたい」と名乗りを上げ、そこから別々の酒蔵へそれぞれ修行へ行くことになりました。



―――別々の蔵でそれぞれ修行後、日本ではなく初めからイタリアで酒造りをしようとしていたんですね。そこから今に至るまでどういった経緯があったのでしょうか?


イタリアは、文化や街並みが素敵なのはもちろん、ヨーロッパ一番の米どころ。海外であればイタリアの米を使った日本酒が造れます。修行後はすぐにイタリアに蔵を立ち上げる予定で準備をすすめていましたが、新型コロナウイルスの影響により断念せざるを得なくなりました。
でも、どうしても「自分たちでお酒を造りたい!」という気持ちが抑えきれませんでした。いったん地元福岡でお酒をつくってみよう、と。



―――「LIBROM」とはどのような意味なのでしょうか?


LIBERTA(自由)とROMANZO(ロマン)の2つのイタリア語を組み合わせた造語です。二人の想いが詰まった醸造所なので、代表の柳生と醸造責任者の穴見の二人の好きな言葉から生まれました。

顔が見える原料へのこだわり

米は福岡県産、水は醸造所のある福岡の天神近くの高砂という地域の水を使うなど 地元にこだわるLIBROMのお酒。
湧き水だと鉄分が多く変色し、醸造の基準を満たさなくなってしまうことや 穴見さんの修行した新潟の阿部酒造が一部商品を水道水で造っていたことから LIBROMでも水道水での酒造りをおこなっています。
他にも、すべての原料にこだわりが詰まっていました。

あえて等外米を使った酒造り

―――ラベルを見ると、お米も福岡県産と記載があります。さらに気になったのが、バーベナのお酒に使われている米の精米歩合が92%という点。食べるお米と同じくらいしか磨いていないということですよね。


米はすべて福岡県産米で、かつ”等外米”といわれる一般には流通しない酒米をあえて使っています。
普段は家畜のエサなどになるはずの等外米を積極的にゆずってもらい、それをおいしいお酒にできたら一番いいなという想いがあったんです。さらに2022年に入ってからは、低精白かつコイン精米にシフトしました。
ペルラネーラなど以前のお酒では68~70%くらいまで磨いていたのですが、そもそもLIBROMのお酒は「その他醸造酒」。日本酒のような「吟醸」や「純米」といったくくりがないんです。そこで、思い切って磨くのもやめました。コイン精米だと食用米と同じ92~93%になるので、自分たちでコイン精米所に持って行き、手作業で精米をおこなっています。少量生産だからできることですね。



―――あまりにきれいな味わいなので、もっと磨いているのかなという印象でした。低精白とはいっても80%くらいのお酒も多いなか、90%以上という基準にした理由はあるのでしょうか?


実は、出来上がったお酒は、個人的にはまだまだ改良の余地があると思っています。仕上がりを飲んだ感想としては、「米のうまみと深みがまだ出せるのに」という印象です。
低精白の基準としてコイン精米を選んだのは、修行先であった阿部酒造がコイン精米の90%で酒造りをおこなっていて、そのお酒がとてもおいしかったからという理由です。
米を削らずやるのが農家さんにとってもいちばんいいので。



―――等外米、さらにほとんど磨いていない、まさに「SDGs」ですね。


SDGsという言葉は全く意識していませんでした。立ち上げ時に「その他醸造酒」の免許を取得すると決まった段階で、等外米+低精白で酒をつくりたい、という想いはLIBROMとしてすでに持っていたんです。普段酒造りに使われることのないお米を使い、さらにぬかも出ないというのが一番いいよね、というのが二人の意見でした。

”顔が見える”副原料

―――いまリリースしているお酒に使われているいちごやピオーネは、福岡で生産が盛んですよね。フルーツや花など、季節に合わせた年間10種を超える味のラインナップがとても魅力的です。原料はどのように選んでいるのでしょうか?


原料の米、水、副原料は九州の原料、特に福岡県産のものを使い、麹も自分たちで一粒一粒つくっています。副原料は花やフルーツ、ハーブです。タンクが小さいぶん、四季醸造ですし、そのぶんいろいろな種類がつくれます。
あまおうのお酒に使ういちごは、久留米のいちご農家さんから直接仕入れているのですが、認証率1%といわれる農法でつくられた、こだわりのものを選びました。
今後はイチジクや柿、はちみつ、レモンなどを使ったお酒を展開予定です。
醸造所の近くに養蜂農家さんがいて、そこのはちみつを使ってつくりたいなと思っています。
お花を使ったシリーズとしては、今後はローズマリーを考えています。



―――米もそうですが、今後のはちみつのように、直接仕入れを目指す理由は?


お米に関しては、いまはJAを通じて仕入れているのですが、目指すは顔が見えるお酒。なので将来的には農家から直接お米を仕入れてつくれたらと思っています。
はちみつも同じ理由から。飲み手のかたが手に取ったときに、福岡のものだとわかってもらうことが、地域を盛り上げることに繋がります。
農家さんのこだわりや、フルーツやお花に対する想いを聞いてお酒に反映させたいと思っています。将来的には副原料を含めてすべて、生産者の顔が見えるようにしていきたいです。

LIBROMのお酒の楽しみかた

そのまま飲んでもおいしいLIBROMのお酒ですが、醸造所には併設のパブがあり、お料理とのマリアージュを楽しめるのも魅力。
さらに、LIBROMのお酒には、ある特徴がありました。

併設の醸造所で味わうマリアージュ

醸造所には併設のパブがあり、お料理とのマリアージュを楽しめるのも特長の一つです。
和・洋問わず、地元の食材を使い、季節に合わせたお料理を味わえます。
腕を振るうのは、西島光輝さん

高校からの同級生である柳生さん、穴見さんに声をかけられ、LIBROMでシェフをすることになったのだそうです。



料理長:西島 光輝(にしじま こうき)さん

高校卒業後、大阪の調理師学校に進む。
専門学校卒業後、岡山県の日本料理一扇で10年間修業を積み、姉妹店である香川県直島のBenesse HOUSEで腕を振るう。

*ペアリングの一例をご紹介します*

こちらのお料理は、LIBROM併設のPUBでも味わうことができます。
ぜひ、料理長自慢のペアリングを堪能してみてくださいね!
(季節によりお料理とお酒のペアリングは異なります)

ホタルイカとあまおうとふきの白和え × LIBROM Fragolaおりがらみ

まずはあまおうなしで、ふきとホタルイカのみを味わいながらペアリング。すると、お料理のほのかなあまおうの風味とお酒のあまおう感がマッチします。
次は大粒のあまおうもいっしょに味わいながらペアリングすることで、 口のなかでしっかりとまとまる印象に。



タコと三つ葉のナッツ柚子胡椒和え × LIBROM verbena

スッキリして香りの強い「Verbena」は香草のお料理と相性ぴったり。

三つ葉の華やかな香りを活かし、旬の福岡の関門だこ、粗く刻んだミックスナッツを合わせ柚子胡椒と醤油で和えたお料理です。
食べやすい大きさに切ったたこ、三つ葉を調味料と和えるだけという シンプルながらも素材の香りとうまみを存分に味わえる一皿です。
九州で使われる甘めのお醤油もポイント。



”置けば置くほどおいしくなる”お酒

―――フルーツが副原料のお酒に関して、味わいの特徴があるそうですね。


フルーツを入れているものに関しては、置けば置くほどおいしくなるのが特徴です。
実は発注を間違えて、マイナスの温度帯にならない冷蔵庫を仕入れてしまい(笑)。
冷蔵庫の温度が2度くらいまでしか下がらないので、仕方なく冷蔵保存で置いてみたら味が乗ってきたんです。いろいろ試してみて一番おいしくなったのは、製造から4~5か月後くらいのものです。もっと寝かせてもおいしいと思います。



―――いわゆる「熟成」ですね。それは驚きの発見です。フルーツが副原料なので、フレッシュさが大事ではと感じるのですが…味わいにはどのような変化がありましたか?


自分としても、最初は「フルーツだしフレッシュ感があるうちに」と思っていたのですが、これまでつくったどのお酒も、置けば置くほど深みが出ておいしくなっていっているんです。
例えばピオーネの味わいの変化に関しては、出来上がりはピオーネの渋味が強く出てしまっていたので、3ヶ月間少し温度が冷蔵庫で熟成保管しました。するとリリース時には、甘味、渋味のバランスが良くキレも増していて、とても飲みやすくなっていたんです。結果として食中酒としては万能で、どんな料理にも合うお酒に仕上がりました。



―――花を副原料に使ったお酒も置いたらおいしく仕上がるのでしょうか?


花を使ったお酒に関しては、フルーツほどの変化はないですね。ただ置けば置くほど燗に向くお酒になっていきます。フルーツはそのまま飲むのがおいしいお酒ですが、お花のお酒はぜひ燗にしてみてください。

まるでコスメ? 細部にまで込められた想い

味や楽しみかたのみならず、ボトルのおしゃれな見た目からも目を離せないのがLIBROM。
コンセプトやデザインへの想いも聞きました。

LIBROM のロゴへの想い

―――ロゴのお花にはどういった意味が込められているのでしょうか。


ロゴの4つの花弁は、米、米麹、水、副原料の4つからなるLIBROMを表しています。
それぞれの花弁が、花びらとして中央で一つに交わるという意味も込めています。最初に造ったのが、花を副原料に使ったお酒だったんです。花をコンセプトにしていこう、という想いを込めてこのデザインになりました。

ボトルへのこだわり

―――ボトルも素敵ですよね。米からできたお酒とは思えない、なんだかアロマのような見た目です。


その他醸造酒で新しいことをやっていくのに、普通の4合瓶じゃ面白くないな、と。
とにかくいろいろな形の瓶を探して、この500mlの瓶にたどり着きました。 たまにコスメと間違われるんですよ(笑)。
ロゴは映像クリエイターをしている柳生の兄がデザインしてくれたのですが、ボトルも3人で意見を出し合って選びました。

それぞれの想いと展望

お酒に弱いからこそできること

―――穴見さんは、実はお酒に弱いとお聞きしました。酒造りの世界に入るのは勇気がいったのではないでしょうか?


そうなんです。実は下戸で(笑)。
毎日テイスティングはしているんですけど、おちょこ1杯くらいしか飲めないので、そのぶんめちゃめちゃ集中して飲んでいます。最初は正直、自分が飲めない葛藤がありました。
ただ、酒造りの世界には意外と下戸を公言する杜氏さんもいらっしゃるので、やってみようかなと。



―――お酒がほとんど飲めないなか、どうやって酒造りをしているのでしょうか?大切にしていることはありますか。


自分も柳生もお酒が弱いのですが、自分たちのようにお酒が弱い人や初心者のかたにもっと日本酒はじめ、その他醸造酒を飲んでもらいたいという想いがあるんです。
また、自分自身が飲めないからこそお客さんの声を大切にしています。併設のお店に立って、お客さんから直接意見を聞いて、造りに反映させることもあります。
あとは、代表の柳生はじめ「この人だったら信頼できる」という人がいるので、アドバイスをもらう人を自分の中で決めています。

とことん話し合い乗り越える 二人のスタイル

―――普段、柳生さんとはどのように協力してお酒をつくっているんでしょうか?


基本的にはほぼ造りを任せてもらっています。悩んだときに、柳生にアドバイスを求めて二人で協力していますが、もちろん意見が割れることも。
そもそも修行した蔵が全く違うタイプで、全く逆と言ってもいいくらいなんです。
意見が割れた場合は、お互いの話をちゃんと聞いて、意見が違うことを確認して、どれが一番最善の策かを模索します。よくよく聞くと、自分が折れたほうがいいこともあるし、やっぱりもっと主張したほうがいいな、ということも。



―――ときにはぶつかり合うことで、だからこそ納得のいく最高のものが造れるんですね。最後に、穴見さんの今後の展望をお聞かせください。


福岡で実際に蔵を立ち上げてみて、お客さんが喜んでいる姿を見ているのがうれしくて、考えが変わりました。個人的な想いとしては、福岡でずっとお酒をつくっていきたいなと。人の意見を聞いて、反映してそれが形になるのがすごくうれしいですね。
「こうつくるとこう感じて、こういう喜びかたをしてくれるんだな」というのを日々探すのが楽しいです。
それから今後は、もう少しフルーツ感が濃い、割る用のお酒も造っていきたいです。
炭酸やソーダなどで割って飲めるような、アルコール11~12%くらいのお酒が造れたらもっと楽しんでもらえるんじゃないかなと。

吟天で販売中のラインナップ

タンクが小さく少量仕込みであることを活かし、月に2種類ほどのお酒をつくっているLIBROM。
穴見さんと柳生さんお二人の想いが詰まったお酒は、現在吟天で3種類取り扱っています。

FRAGOLA (おりがらみ)あまおう

フルーツの中でも特に人気の高いイチゴと日本酒がコラボレーション。
地元福岡の「うるう農園」さんの完熟したあまおうの香りと味わいを引き出すように、麹にも細心の注意を払いながら造り込みました。おりがらみのため、味の深い一本です。
あまおうの上品な香りが米の旨味とともに広がります。
ぜひ、いちごのアフタヌーンティーにもこのお酒を添えてお楽しみください。



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PERLA NERA

日本酒にワインのような酸味・渋味へ加える探求から生まれたPerla near(ペルラネーラ)。

大粒の黒ぶどうの代表格、ピオーネを漬け込み仕上げた後、3ヶ月の冷蔵熟成をかけました。甘味と渋みが適度なバランスで、飲みやすいお酒です。
Perla nearとは、イタリア語で「黒真珠」。その名の通り、上品で落ち着いた味わいです。オリーブオイルを使ったフルーツサラダとご一緒にどうぞ。



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VERBENA

レモンに似た、爽やかな香りを持つレモンバーベナ。
福岡県の「ガーデンアルテ」との共同研究により、アルコールとの相性・漬け込む温度帯から、採用されました。

精米度合92%の山田錦は、米の味わいがしっかりと感じられる酒となり、発酵期間中に加えたレモンバーベナが独特な酸味と香りをもたらします。

発酵期間が短いため、アルコール度数も低めです。カルパッチョやアヒージョにもぴったり。



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このほか、季節ごとに特産の副原料をふんだんに使ったLIBROMのお酒が登場予定。

今後もどうぞお楽しみに。

ライター紹介

石川 奈津紀

仙台市出身。NHK山形、NHK仙台でキャスターを務めたのち2018年から東京でフリーアナウンサーとして活動。唎酒師とダイエットプロフェッショナルアドバイザーの資格を活かし、日本酒を健康的に楽しみ、飲みながら痩せる「NOMIYASE」をSNSを中心に発信し、イベントなどもおこなう。

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